林典則さん元中京商業学校美術部員(1945年卒)

卒業アルバムを手にする林さん。「2605」は皇紀で、1945(昭和20)年を指す

 林さんは、第2次世界大戦末期の1945(昭和20)年3月に中京商業学校(現・中京大学附属中京高校)を卒業した。終戦翌月の9月に、卒業アルバムを受け取った。卒業アルバムは、中身がまっさらな台紙だった。自分で写真を貼り、写真の周りに挿絵も施して大切に保管してきた。今回、その卒業アルバムを提供していただいた。

 林さんは1941(昭和16)年に入学、美術部に所属し、主に水彩画を描いていた。戦時下で授業をきちんと受けられたのは、3年生の半ばまで。生徒たちは勤労作業に動員された。中京商業学校は当時、5年制だったが、林さんら4年生は繰り上げとなり、5年生と一緒に卒業となった。「戦時中で大変だったが、今では懐かしい思い出です」と、当時を振り返る。

 卒業間近の3月19日未明、名古屋市中区にあった鶴舞校舎は名古屋大空襲に見舞われて全焼した。卒業式は、児童の疎開で空き家になっていた近隣の吹上小学校で行われたが、林さんは電車事故の影響で出席できなかった。

 卒業後は愛知県海部郡七宝村(現・あま市七宝町)で、家業である七宝焼の窯元の仕事を受け継いだ。若くして亡くなった父の跡は叔父が継いだが、いとこと共に長年七宝焼を作り続けてきた。近年は附属高校美術部OB有志による「百花の会」の展覧会に、伝統工芸品や油絵などを出品している。