中京大学にて日本ロールシャッハ学会第27回大会を開催

 日本ロールシャッハ学会第27回大会が12月2日、3日に、中京大学名古屋キャンパスで開催されました。本大会のテーマは「心理アセスメントの展開図 -技法の多面性を読み解く」です。投映法がこれらの心理臨床現場において役に立つ技法であり続けるために、投映法の読み解き方、臨床的に有用なフィードバックの仕方について学び、明日からの心理臨床につなげることを目的として開催しました。
臨床心理学の実践・研究では、カウンセリングや心理療法などの心理的支援の他に、心理アセスメントという分野があります。心理アセスメントとは面接や心理検査を通して、クライエントの抱えている心理的問題の背景や心理的状態を評価・査定することを言います。心理検査には、投映法と呼ばれる伝統的な心理アセスメントの技法があり、日本ロールシャッハ学会ではロールシャッハ・テストを代表とした投映法の研究発表の場となっております。中京大学は第2回大会を開催しており、25年経って再び中京大学での開催でした。
 本大会では、プログラムの1つに実行委員会企画シンポジウム「投映法のパイオニアから学んだこと」を企画しました。中京大学心理学部臨床心理学領域では、投映法のパイオニアといえる片口安史先生、空井健三先生、鈴木睦夫先生が、大学院生に投映法による深く、きめ細かな解釈の仕方ならびに研究への情熱を伝えました。今回、片口先生、空井先生、鈴木先生から薫陶を受けられた先生方が、投映法のアセスメントにおいて継承されたこと・学んだことを話しました。さらに、同じく本学で教鞭をとられておられた田中富士夫先生から学んだ研究への真摯な姿勢についても話題になりました。

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藤岡新治先生(専修大学名誉教授・本学修士課程修了)による片口安史先生の話題提供

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大矢寿美子先生(金沢工業大学教授・本学修士課程・博士課程修了)による空井健三先生・田中富士夫先生の話題提供

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石井明子先生(中京大学心理学部任期制講師・本学修士課程・博士課程修了)による鈴木睦夫先生の話題提供

 先生方の話から、研究に情熱を注いでいる姿や様々な事例の投映法を解釈する機会を提供いただいたという体験から大きな影響を受けられたようです。さらに「臨床指導とは伝達と継承である」、「臨床心理学の関わる領域は広いため、各分野の悩み・課題の一般的性質を知っておくこと」、「臨床心理学研究は臨床実践に貢献できることが大切であるからその知見を使用する人/読者の立場で論文を書くこと」、「目の前にクライエントがいる以上,臨床上の無駄な要素は一瞬たりともない(真剣に)」ということを伝えました。

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八尋華那雄先生(中京大学名誉教授)による指定討論

 片口先生・空井先生・田中先生・鈴木先生と長く一緒に臨床心理学教育を携わってこられた八尋華那雄先生から各先生のお人柄やエピソードについてお話しいただきました。最後に、投映法アセスメントで大切なことを問われると、「投映法はパーソナリティの多くの側面を知ることになる。その中でもポジティブな面に注目しよう」、「その人のパーソナリティの持ち味は何か、その持ち味がうまく活かせるためにはどうすればよいか考えてみよう」、「投映法はその人のパーソナリティの個性・独自性を理解することが大切だ」と答え、投映法のエッセンスを会場の参加とともに共有しました。

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大会運営スタッフ(本学心理学研究科・心理学部のスタッフの皆さん)

 本大会は、本学心理学研究科臨床心理学領域の大学院生ならびに心理学部明翫ゼミの学部生が大会スタッフとして本大会をサポートし、400人を超える臨床心理学の専門者が来場され、盛会となりました。講師の先生方、ご来場の皆さま、スタッフの皆さま、誠にありがとうございました。

日本ロールシャッハ学会第27回大会大会長
中京大学心理学部 明翫光宜

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